No.82新着 扶養照会の「照会率」の自治体差:中野区5.5%〜佐賀市78.0%(2021年度・朝日新聞調査)
朝日新聞の調査では、2021年度に保護が決まった世帯の親族のうち実際に照会した割合は、59市区で中野区5.5%から佐賀市78.0%まで10倍以上の差があった。74市区の照会件数は通知の前後で約2割減ったが、仕送りにつながった件数はほぼ横ばいだった。
本文と出典
【要点】
・朝日新聞は、全国の県庁所在市・政令指定市・東京23区の計74市区にアンケートや情報公開請求を行い、扶養照会(親族に仕送りなどの援助ができるかを尋ねる手続き)の実態を調べた(2023年3月28日・29日報道)。
・2021年度に保護の開始が決まった世帯について、扶養義務者として名前を挙げた親族のうち実際に照会した人の割合(照会率)は、回答のあった59市区で5.5%から78.0%まで、10倍以上の差があった。
・74市区の照会件数は2020年度の約12万7千件から2021年度は約10万1千件へ約2割減った一方、仕送りにつながった件数や金額は大きく変わらなかった。
【数字・中身】
照会率(2021年度に保護開始が決まった世帯・59市区):
・低い順:中野区5.5%(2,009人のうち110人に照会)、水戸市12.4%、足立区17.6%
・高い順:佐賀市78.0%(945人のうち737人)、品川区73.0%、宇都宮市69.6%
・59市区の平均は41.9%。横浜市・神戸市・北九州市・大田区など15自治体はデータの一部がないなどで計算できなかった
2020年度と2021年度の比較(74市区):
・保護開始の世帯数:どちらの年度も約10万3千世帯
・親族への照会件数:約12万7千件(2020年度)→約10万1千件(2021年度)
・仕送りにつながった数:738件(2020年度)→826件(2021年度)
・仕送りの総額:7,264万円(2020年度)→7,101万円(2021年度)
【背景】
・生活保護法第4条第2項は、扶養義務者の扶養は保護に「優先して行われる」と定める。厚労省は、これは保護の要件ではなく、実際に仕送りがあればそれを収入として扱うという意味で、扶養できるかどうかが保護を受けられるかの判定に影響するものではないと説明している(2026年3月)。
・厚労省は2021年2〜3月に、照会しなくてよい親族の例を示し(音信不通の目安を「20年間」から「10年程度」に)、本人が照会を拒む場合は特に丁寧に聞き取るよう求める文書を出した(朝日新聞)。ただし、照会するかどうかの最終的な判断は各福祉事務所にゆだねられている。
【論点】
・照会の範囲をもっと狭く、はっきりさせるべきだとする立場:立命館大学の桜井啓太准教授(社会福祉学)は、照会が2割減っても仕送りがあまり変わらないのは無駄な照会が多かった証拠だとし、本人の意向を尊重し、対象を配偶者や中学生以下の子に対する親などに狭めるべきだと述べた(朝日新聞・2023年3月28日)。国が誰にでもわかる明確な基準を設けるべきだとも話している(同・3月29日)。
・扶養照会のしくみを保ちつつ、福祉事務所の判断で行う立場(厚生労働省):法律上、扶養は保護に優先するとしたうえで、「扶養義務の履行が期待できない」と判断した親族(施設入所者・長期入院患者・おおむね70歳以上の高齢者・10年程度音信不通の人など)には基本的に照会しない取り扱いとし、面接で相談者に誤解が生じないよう丁寧な説明を自治体に求めている(2026年3月の会議資料)。
【注意】
・照会率は朝日新聞が自治体の回答から計算したもので、国の統計ではない。数字は2021年度のもので、その後の状況は今回確かめていない。
・「照会率」は、名前を挙げた親族の人数に対する照会した人数の割合。世帯単位の割合とは違う。
・2021年の通知そのものの中身は「扶養照会の運用見直し(2021年2月26日の厚労省通知・事務連絡)」の記事を参照。
【出典】
・生活保護の親族への「照会率」、自治体で10倍超の差 朝日新聞調査(朝日新聞・2023年3月29日)https://www.asahi.com/articles/ASR3S74FLR3RUTFL01D.html
・生活保護の「壁」扶養照会、慎重運用求める通知後2割減る 朝日調査(朝日新聞・2023年3月28日)https://www.asahi.com/articles/ASR3S725CR3RUTFL01B.html
・令和7年度 社会・援護局関係主管課長会議資料(資料3)(厚生労働省・2026年3月)https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001671241.pdf
情報・意見(0件)
情報や意見を書くにはログインが要ります(読むだけならログインは要りません)。