No.127新着 オーストリアの社会扶助(Sozialhilfe):単身は2026年に月約1,230ユーロが上限、受給者20万5,781人(2024年)、2019年の基本法の一部違憲判断と「新しい社会扶助」の賛否
オーストリアの社会扶助は2019年の連邦の基本法で「上限額」方式になり、2026年の単身の上限は月約1,230ユーロ。第三国の人は原則5年の合法居住が要る。受給者は2024年に20万5,781人(年平均)で、53.4%が第三国の国籍。
本文と出典
【要点】
・オーストリアの社会扶助は州の仕事で、国(連邦)は2019年の「社会扶助基本法」で州が守るべき大枠を決めた(2019年6月1日施行)。それまでの「最低額」を保障する方式から、「上限額」を決める方式に変わった。
・2026年の上限は、単身・一人親で月約1,230ユーロ、夫婦で約1,722ユーロ(年12回)。住居費が高い地域では30%まで上乗せできる。
・憲法裁判所は2019年12月12日、子どもの額を2人目・3人目と減らしていく決まりと、ドイツ語B1・英語C1の証明がないと給付を減らす決まりを違憲として取り消した。
・第三国(EU外)の国籍の人は、原則5年を超えて合法に住んでいないと受けられない。難民と認定された人は認定のときから受けられる。
・いまの3党連立政府は全国でそろえた「新しい社会扶助」を2027年1月に始める予定で、移民向けの「統合期間」をめぐって賛否が分かれている。
【数字・中身】
給付の額(オーストリア政府の案内ページ・2026年1月1日更新)
・単身・一人親の上限:月約1,230ユーロ。夫婦:約1,722ユーロ(基本法に合わせた州法をまだ作っていないチロル州は夫婦約1,845ユーロ)
・子どもの額:憲法裁判所が上限の決まりを取り消したので、州が自由に決める
・一人親への上乗せ(州が選べる):子1人目約148ユーロ〜4人目以降約37ユーロ(1人あたり月額)
・障害のある人への上乗せ:約221ユーロ(州は必ず出す)
・同じ世帯の大人の給付の合計の上限:約2,152ユーロ(単身の基準の175%)
・住居費:州は基本額を30%(約369ユーロ)上げ、約1,599ユーロにできる
資産(社会省の案内・2026年1月1日更新)
・資産は先に使う。ただし住んでいる家・仕事や障害で必要な車などは除く。州の決まりで手元に残せる資産は約7,379ユーロ(2026年)
・持ち家は、受給が3年続いたときに初めて登記上の担保を付けられる
外国人の扱い(社会省の案内)
・EU・EEA の国民:働いている人、または5年を超えて住んでいる人は制限なし
・第三国の国民:原則として5年を超えて合法に住んでいることが必要
・難民と認定された人:認定のときから受けられる
・難民申請中の人・避難民:受けられない
・補充的保護(難民ではないが送り返せない人):基礎的な給付だけで、難民申請者向けの「基本ケア」の水準を超えない。フォアアールベルク州以外はすべて基本ケアで支える
受給者と費用(オーストリア統計局・最低保障と社会扶助の統計、2025年9月2日作成)
・受給者(年平均):2024年20万5,781人(前年より4.5%増)。うちウィーン14万9,188人
・2017年は23万9,481人、2022年は18万9,957人
・費用:2024年13億1,700万ユーロ(前年より19.5%増)。1世帯あたりの平均の月額952ユーロ
・受給者の内訳(2024年・年平均):子ども36.7%、女性31.9%、第三国の国籍53.4%、オーストリア国籍37.8%、失業中35.2%、働いている人8.4%
【背景】
・2019年の基本法と同時にできた社会扶助統計法とあわせ、連邦参議院の SPÖ(社会民主党)の議員21人が憲法裁判所に申し立てた(憲法裁判所の発表・2019年12月17日)。
・憲法裁判所(2019年12月12日・G 164/2019、G 171/2019)は、子どもの上限を1人目は年金の最低保障額の25%、2人目15%、3人目以降5%とした決まりは、子どもの多い家庭を理由なく不利にし、生活費をまかなえなくなるおそれがあるとした。給付の35%以上をドイツ語B1・英語C1の証明に結びつけた「就労資格ボーナス」も、多くの仕事はその水準の語学を必要としないとして平等原則違反とした。大人の上限額と、国が細かい決まりを作ること自体は認めた。
・2023年3月15日には、住居費の給付を家主に直接払うよう義務づけた決まりも憲法裁判所が取り消した。2022年には外国人の困窮時の例外の規定などが加わった。2026年1月1日時点で、基本法に合わせた州法があるのは9州のうち8州。
【論点】
・統一した新制度と統合期間を進める立場(政府):NEOS のシェッティ院内総務は2025年9月、社会扶助を全国でそろえ、より公平で的確にする「仕組みの転換の出発点」と述べた(Salzburg24・2025年9月15日)。統合担当のプラコルム大臣(ÖVP)は、難民と認定された人は最初の3年間、社会扶助ではなく「統合手当」を受け、額は語学や価値観の講座への参加に応じて決まると説明し、オーストリア国民には適用しないとした(ORF・2025年9月10日)。社会省(SPÖ)は平等な扱いの観点から全員に適用するとしていた(同)。2026年9月に報じられた社会省の案は、大人の定額化、子どもの最低額の新設(現金と、アプリで使う現物給付に分ける)、2段階の統合手当を含む(ORF・2026年9月7日)。
・案が甘すぎるとする立場:FPÖ のベラコヴィッチ議員は、案を「社会制度への移民の計画」だと批判した。ウィーンの ÖVP は、ウィーン市が上限より高い給付を続けられることを批判した(ORF・2026年9月7日)。
・案が貧困対策として不十分とする立場:貧困問題の支援団体の連合「アルムーツコンフェレンツ」のシェンク氏は、案に「貧困をなくす」という目的の規定がないこと、現金から現物給付への切り替えを批判し、現金と相談支援の組み合わせを求めた(ORF・2026年9月19日)。
【ほかの国では】
・EU の2025年の報告では、フランス・イタリア・オーストリアなどが第三国の人に5年の居住を求めている(別の記事を参照)。日本の生活保護は、永住者・定住者などの在留資格で対象を決め、居住年数の要件はない(別の記事を参照)。
【注意】
・受給者数と費用は、上限方式の「社会扶助」と、まだ旧制度の「最低保障」の州を合わせた数字。ウィーンでは2024年3月から、年金に家賃補助だけを上乗せしていた人を別の制度へ移しているので、前の年との比較には注意が要る。
・「約1,230ユーロ」などの額は政府の案内の丸めた数字。実際の額は州ごとの法律で決まる。
・「新しい社会扶助」は2026年10月時点で連立与党の協議中で、内容は変わりうる。「統合期間3年」はプラコルム大臣の2025年9月の説明で、2026年の案での期間は確かめられなかった。
・ユーロを円には直していない。
【原文】
・Allgemeines zur Sozialhilfe(oesterreich.gv.at, Bundesministerium für Arbeit, Soziales, Gesundheit, Pflege und Konsumentenschutz・2026-01-01更新)https://www.oesterreich.gv.at/de/themen/hilfe_und_finanzielle_unterstuetzung_erhalten/4/Seite.1693914
・Sozialhilfe: Anspruchsvoraussetzungen(Sozialministerium・2026-01-01更新)https://www.sozialministerium.gv.at/Themen/Soziales/Sozialhilfe-und-Mindestsicherung/Anspruchsvoraussetzungen.html
・Mindestsicherung und Sozialhilfe(Statistik Austria・2026-09-09更新)https://www.statistik.at/statistiken/bevoelkerung-und-soziales/sozialleistungen/mindestsicherung-und-sozialhilfe
・VfGH zu Sozialhilfe-Grundsatzgesetz: Höchstsatzsystem für Kinder sowie Arbeitsqualifizierungsbonus verfassungswidrig(Verfassungsgerichtshof, Presseinformation・2019-12-17)https://www.vfgh.gv.at/downloads/VfGH-Presseinformation_vom_17._Dezember_2019.pdf
・Sozialhilfe: Verwirrung über „Integrationsphase" für Österreicher(ORF.at・2025-09-10)https://orf.at/stories/3405079/
・Neue Sozialhilfe: Regierung plant österreichweit einheitliche Regelung(Salzburg24・2025-09-15)https://www.salzburg24.at/news/oesterreich/neue-sozialhilfe-regierung-plant-oesterreichweit-einheitliche-regelung-art-302240
・Sozialhilfe: Mindestsätze und Integrationsbeihilfe geplant(ORF.at・2026-09-07)https://orf.at/stories/3441482/
・Armutskonferenz übt Kritik an Entwurf für Sozialhilfe(ORF.at・2026-09-19)https://orf.at/stories/3442625/
【出典】
・社会扶助の概要(オーストリア政府の案内ページ・社会省・2026年1月1日更新)https://www.oesterreich.gv.at/de/themen/hilfe_und_finanzielle_unterstuetzung_erhalten/4/Seite.1693914
・社会扶助を受ける条件(オーストリア社会省・2026年1月1日更新)https://www.sozialministerium.gv.at/Themen/Soziales/Sozialhilfe-und-Mindestsicherung/Anspruchsvoraussetzungen.html
・最低保障と社会扶助の統計(オーストリア統計局・2025年9月2日作成、2026年9月9日ページ更新)https://www.statistik.at/statistiken/bevoelkerung-und-soziales/sozialleistungen/mindestsicherung-und-sozialhilfe
・社会扶助基本法の判断(オーストリア憲法裁判所の報道発表・2019年12月17日)https://www.vfgh.gv.at/downloads/VfGH-Presseinformation_vom_17._Dezember_2019.pdf
・「統合期間」をめぐる政府内の食い違い(ORF・2025年9月10日)https://orf.at/stories/3405079/
・政府が全国統一の新制度を計画(Salzburg24・2025年9月15日)https://www.salzburg24.at/news/oesterreich/neue-sozialhilfe-regierung-plant-oesterreichweit-einheitliche-regelung-art-302240
・社会省案:子どもの最低額と統合手当(ORF・2026年9月7日)https://orf.at/stories/3441482/
・アルムーツコンフェレンツの案への批判(ORF・2026年9月19日)https://orf.at/stories/3442625/
【動画】
・Sozialhilfe kürzen – aber um wieviel? | Report 15.09.2026(ORF Kontext)https://www.youtube.com/watch?v=yfvxpvmtSUE
日本語の要約:オーストリア公共放送 ORF の報道番組。2027年に予定する全国統一の社会扶助について、社会省の最初の案は「給付は義務と引き換え」で、統合や就労に応じない人は減額されるが、減額の幅は3党連立の中でまだ決まっていないと伝える。州の反発や、州の厳しい規則で働く人が本当に増えたのかも取り上げる(2026年9月15日放送)。(説明文から)
関連動画
日本語の要約(動画の説明文からこのサイトがまとめたもの)
オーストリア公共放送 ORF の報道番組。2027年に予定する全国統一の社会扶助について、社会省の最初の案は「給付は義務と引き換え」で、統合や就労に応じない人は減額されるが、減額の幅は3党連立の中でまだ決まっていないと伝える。州の反発や、州の厳しい規則で働く人が本当に増えたのかも取り上げる(2026年9月15日放送)。(説明文から)
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