No.112新着 パチンコ店に出入りした受給者の保護費停止(大分県別府市・中津市・2015年度)と、県の指摘による撤回(2016年3月)、国の答弁書
別府市は2015年10月にパチンコ店などを巡回し、2回以上来ていた受給者9人の保護費を1〜2か月一部停止、中津市も4人を減額した。県の指摘で両市は2016年度から停止・減額をやめたが、巡回は続けるとした。
本文と出典
【要点】
・別府市は2015年10月、ケースワーカー35人で市内のパチンコ店と市営競輪場を調べ、受給者25人に文書で指導・指示し、期間中に2回以上来ていた9人の保護費(医療扶助を除く)を1〜2か月一部停止した。
・中津市も月1回パチンコ店などを巡回し、2015年度に4人の保護費を減額した。
・政府は2016年1月19日の答弁書で、パチンコ店などへの立ち入りについて生活指導はできるとし、保護の停止は指導・指示に従わないときに状況を適切に把握したうえで行うべきだとした。
・大分県は監査で「パチンコは法律で明確に禁止されていない」と指摘し、両市は2016年度から停止・減額をやめた。ただし巡回は続けるとした。
【数字・中身】
・別府市(2015年10月の調査):調査したケースワーカー35人、見つかった受給者25人、2回以上来ていた9人を1〜2か月の一部停止(弁護士ドットコムニュース・2016年3月9日)
・中津市:2015年度に4人の保護費を減額(J-CAST ニュース・2016年3月17日)。食費にあたる分を一時カットしたとの報道もある(THE PAGE・2016年5月31日)
・大分県の指摘:別府市に2016年2月26日、中津市に3月16日(J-CAST ニュース)
・政府の答弁書(2016年1月19日・内閣衆質190第21号。初鹿明博衆議院議員の質問主意書〈2016年1月6日〉への答弁)
・一:別府市の指導の詳細は把握していないとしつつ、一般論として、福祉事務所がパチンコ店などへの立ち入りについて法第27条に基づき生活指導を行うことは可能
・二:法第62条により、指導・指示に従わないときは保護の変更・停止・廃止ができ、受給者の状況を適切に把握したうえで行うべき
・三:ギャンブル依存症を含め、課題のある受給者が自立した生活を送れるよう適切に支援することが重要
【背景】
・両市は、受給者の生活上の義務を定めた生活保護法第60条に反するとして、パチンコ店などへの出入りを禁じていた(J-CAST ニュース)。
・撤回の報道のあと、別府市には1週間で200件以上の電話・メールがあり、9割近くが撤回に反対する内容だった(THE PAGE・2016年5月31日)。
・兵庫県小野市は、パチンコの禁止を明文化した独自の生活保護関連条例を2013年に施行した(THE PAGE・2016年5月31日の「3年前」から。条例の中身はこのサイトでは確かめていない)。
【論点】
・指導や停止は必要とする立場(別府市・中津市、2016年3月):別府市は意見書を受けた後も、働ける人が求職活動をしないことは見過ごせず、ギャンブル依存症を早く見つけるためにも調査を続けるとした(弁護士ドットコムニュース)。両市は停止・減額をやめた後も、巡回で出入りしないよう働きかけ、就労活動や治療をしない受給者には停止・減額を続けるとした(J-CAST ニュース)。
・違法だとする立場(生活保護支援九州・沖縄ネットワークと生活保護問題対策全国会議〈弁護士・司法書士らの団体〉、2016年3月9日の意見書):法第27条が定める「受給者の自由の尊重」と指導・指示の強制の禁止に反するとして、調査・指導の中止と処分の取り消しを求めた。保護費の範囲での娯楽は法の目的に反しないとした。市の担当者は内容に異論はないとしつつ、不服申し立ての期間が過ぎたとして処分は取り消さなかった(弁護士ドットコムニュース)。
・停止ではなく支援につなぐべきとする立場(初鹿明博衆議院議員、2016年1月6日の質問主意書):賭け事への浪費は納税者の理解を得にくいとしながら、収入が増えていないのに保護費を大きく減らせば最低限度の生活が保てなくなり、依存症の可能性があれば回復プログラムにつなぐべきだとした。
・使い道をめぐる裁判例:生活保護問題対策全国会議の声明(2016年4月25日)は、保護費の使い道は自由であることを確認した判決として、福岡高裁1998年10月19日判決(最高裁2004年3月16日判決で確定。学資保険の記事を参照)を挙げている。パチンコをめぐる停止処分そのものの裁判は、このサイトでは見つけられなかった。
【注意】
・停止・減額は2015年度のもので、両市は2016年度からやめた。巡回の現在の状況は、このサイトでは確かめていない。
・別府市への意見の「9割」は市に寄せられた電話・メールの集計で、世論調査ではない。
・別府市の調査について、質問主意書は「調査した五日間」と書いており、報道の「10月の1か月間」と書き方が違う。
【出典】
・生活保護の被保護者への指導等に関する質問主意書(初鹿明博・2016年1月6日提出・質問第21号)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a190021.htm
・同 答弁書(内閣総理大臣 安倍晋三・2016年1月19日・答弁第21号)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b190021.htm
・パチンコで生活保護「停止・減額」撤回に反対の声9割 大分県の2市「巡回は続ける」(J-CAST ニュース・2016年3月17日)https://www.j-cast.com/2016/03/17261666.html?p=all
・別府市の保護費停止に意見書(弁護士ドットコムニュース・2016年3月9日)https://www.bengo4.com/c_18/n_4391/
・「生活保護でパチンコ」は減った? 独自対策打ち出した3市のいま(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE・2016年5月31日)https://news.yahoo.co.jp/articles/aeed8c831a2c6b2c3f0bdf1d609fd100341bf71d
・大阪市の生活保護費プリカ支給断念をふまえ吉村市長発言の危険性を指摘する声明(生活保護問題対策全国会議・2016年4月25日)http://665257b062be733.lolipop.jp/160420purikasemei.pdf
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