No.111新着 保護費の一部をプリペイドカードで払う大阪市のモデル事業(2015年5月〜2016年3月):想定2,000に対し利用65世帯で終了、ねらいと反対の声
大阪市は2015年5月から、希望する受給者に生活扶助のうち月3万円をVisaプリペイドカードで払うモデル事業を行ったが、利用は65世帯にとどまり2016年3月末で終えた。家計管理の支援とする市と、プライバシー侵害とする法律家団体で意見が分かれた。
本文と出典
【要点】
・大阪市は2014年12月26日に、生活保護費の一部をプリペイドカード(前もってお金を入れておくカード)で払うモデル事業を発表し、2015年2月に募集、5月に運用を始めた。
・申し出た受給者にVisaのプリペイドカードを貸し、生活扶助費のうち一律月3万円を入金する。カードはVisa加盟店で使える。
・想定は約2,000(報道により人・世帯)だったが、利用は65世帯にとどまり、市は2016年3月末で終えて本格実施を断念した(J-CAST ニュース・2016年4月14日)。
・市と厚生労働大臣は「家計管理の支援」として法令上問題ないとし、法律家の団体などはプライバシー権・自己決定権の侵害だとして撤回を求めた。
【数字・中身】
・大阪市の説明(「生活保護の適正化に向けて」2015年11月)
・対象:利用を申し出た受給者
・入金:生活扶助費の一部、モデル実施では一律月30,000円
・市が挙げたよい点:利用明細で家計を管理できる、区の保健福祉センターが必要に応じて金銭管理を支援できる、紛失・盗難のときに利用停止と再発行をすれば残高を使い続けられる
・実績(J-CAST ニュース・2016年4月14日):目標2,000世帯、開始当初5世帯、最終的に65世帯。1人あたり平均約8万円の受給額のうち3万円をカードに入れるしくみ
・市保護課が挙げた伸びなかった理由(同):受給者の55%以上が65歳を超えている、個人商店などで使えない、パソコンやスマートフォンの利用が前提になる
【背景】
・生活保護法は金銭で給付することを原則とし、保護の目的のために必要なときは物での給付(現物給付)もできるとしている(塩崎厚生労働大臣の2015年4月28日の会見での説明)。
・橋下徹大阪市長(当時)は2014年12月26日の会見で、利用記録が残り家計の収支をつかみやすくなる、ギャンブルや過度の飲酒で生活費を使い果たす人の支援にもなると説明した(ログミーの会見全文)。
【論点】
・家計管理の支援として進めるべきとする立場(大阪市・橋下市長〈当時〉、2014年12月26日):家計管理が必要な受給者の自立支援策で、支給と支出の管理につながるとした。
・法令上の問題はないが全員への拡大は難しいとする立場(塩崎恭久厚生労働大臣、2015年4月28日の会見):家計管理の支援が目的で、生活扶助費の一部に限り本人の承諾を得て行うので法令上の問題はなく生活にも配慮されているとしたうえで、全世帯へ一律に広げることは「困難」と述べた。
・本当はカードを原則にしたいとする立場(吉村洋文大阪市長、2016年4月の会見。生活保護問題対策全国会議の声明が引く報道による):法律上強制できず、国の制度を変えないと普及は難しいので、利用者アンケートを検証して国に制度変更を求めたいと述べたとされる。
・権利の侵害だとして反対する立場(生活保護問題対策全国会議〈弁護士らの団体〉、2016年4月25日の声明):金銭給付の原則は保護費の使い道が自由であることを意味し、使える店が限られると選択が狭まり、持病などで特定の店でしか食材を買えない人には危険になる。利用履歴を役所が把握するのはプライバシー権・自己決定権(憲法13条)の侵害で、ギャンブル・アルコールの依存は専門の治療や支援なしには解決しないとした。同会議は2015年3月5日に他の160団体と撤回を求める要望書を出し、日本弁護士連合会(2015年2月27日)・大阪弁護士会(2015年2月12日)も中止・撤回を求める会長声明を出したと声明に記している。
【注意】
・利用は本人の選択制で、強制ではなかった。65世帯は大阪市の受給世帯全体から見るとごく一部で、効果(家計管理が改善したか)を示す数字は、このサイトでは見つけられなかった。
・想定の「2,000」は、報道や事業者の発表で「人」と「世帯」の両方の書き方がある。
・吉村市長の発言は、反対する団体の声明が「各種報道によれば」として引いたもので、会見の記録そのものはこのサイトでは確かめていない。
【出典】
・生活保護の適正化に向けて(大阪市・2015年11月)https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/cmsfiles/contents/0000086/86801/tekiseikanimukete2.pdf
・塩崎大臣閣議後記者会見概要(厚生労働省・2015年4月28日)https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000084184.html
・大阪市、生活保護費の一部をプリペイドカードで支給へ(ログミー・橋下市長の会見・2014年12月26日)https://logmi.jp/attention/press_conference/32679
・生活保護費プリペイド制「利用者少なく断念」に異論(J-CAST ニュース・2016年4月14日)https://www.j-cast.com/2016/04/14264112.html?p=all
・大阪市の生活保護費プリカ支給断念をふまえ吉村市長発言の危険性を指摘する声明(生活保護問題対策全国会議・2016年4月25日)http://665257b062be733.lolipop.jp/160420purikasemei.pdf
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