No.101新着 学資保険の満期金を収入とみなした減額は違法(最高裁2004年3月16日判決):保護費からの子の高校進学のための積立て
最高裁第三小法廷は2004年3月16日、保護費などを元手に子の高校進学のために掛けた学資保険(月3,000円・満期50万円)の返戻金を収入とみなして保護費を減らした福岡市の処分を、法の趣旨にかなう貯蓄だとして違法と判断した。
本文と出典
【要点】
・最高裁判所第三小法廷は2004年(平成16年)3月16日、学資保険の満期保険金を収入と認定して保護費を減らした処分を違法とした福岡高等裁判所の判決を支持し、国側(福祉事務所長)の上告を棄却した(平成11年(行ツ)第38号、裁判官全員一致)。
・最高裁は、保護費などを元手にした貯蓄でも、生活保護法の趣旨・目的にかなう目的と方法でされたものは、収入とみなすべき資産に当たらないとした。
・子の高校修学の費用を蓄える努力は、法の趣旨に反しないと述べた。
【数字・中身】
判決文が認めた事実:
・世帯は1975年(昭和50年)9月から生活保護を受けていた
・父は1976年6月、郵政省の18歳満期の学資保険(保険料月3,000円・満期保険金50万円)に加入した。目的は子の高校修学の費用で、保険料の元手は保護費と認定を受けた収入だった
・1990年6月、貸付けの返済分などを引いた残り44万9,807円を受け取った
・福祉事務所長は同月28日、そのうち44万5,807円を収入と認定し、1990年7月分から12月分の保護費を月9万5,175円(7月分は9万5,168円)に減らした。6月分の保護は合計18万円余だった
最高裁の判断:
・保護費をその月のうちに使い切ることまでは法は求めておらず、節約で貯蓄に回せるお金が生じることもありうる
・法の4条1項・8条1項も、持っている資産をすべて使い切らなければ保護しないという意味ではない
・高校の費用は当時の保護の対象外だったが、ほとんどの人が高校に進む状況で、進学は自立に役立つと考えられる。実務も高校に通いながら同じ世帯で保護を受けることを認めてきた
・返戻金が法の趣旨に反する使われ方をした事情もうかがわれないので、収入認定は法の解釈を誤ったものとした
【背景】
・判決文によると、保護の実務では当初、高校に進む子を世帯から切り離す「世帯分離」で対応していたが、1961年以降は世帯にいたまま通学することを認める運用に変わり、1970年にはすべての高校が対象になった。
・現在は、高校などに通う費用は生業扶助の「高等学校等就学費」で出している(社会保障審議会 生活保護基準部会・2017年9月29日資料)。
・最高裁の判決文は、保護費を貯蓄に回すことは本来法が予定するところではないとも述べており、どんな貯蓄でもよいとしたわけではない。
【注意】
・判決は「法の趣旨・目的にかなった目的と態様」の貯蓄に限って収入とみなさないとしたもの。目的や額が違う貯蓄にそのまま当てはまるとは限らない。
・判決の対象は1997年の改正前の生活保護法で、当時は扶助が7種類(介護扶助の前)だった。
・判決文では当事者の名前は伏せられている。
・高等学校等就学費がいつ、この判決とどうかかわって設けられたかは、この記事では出典で確かめられなかった。
【出典】
・最高裁判所第三小法廷 平成16年3月16日判決(平成11(行ツ)38、民集58巻3号647頁)裁判例情報(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/hanrei/52270/detail2/index.html
・同 判決全文(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52270.pdf
・有子世帯の扶助・加算における教育費用に関する検証方法について(第32回社会保障審議会生活保護基準部会 資料3-1・2017年9月29日)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000179164.pdf
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