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No.100新着 老齢加算の廃止をめぐる最高裁判決(2012年2月28日・4月2日):廃止は大臣の裁量の範囲内で適法

70歳以上の受給者への老齢加算(1級地で月1万7,930円)を2004〜2006年度に段階的に廃止したことについて、最高裁は2012年2月28日(東京)と4月2日(北九州)の判決で、厚労大臣の裁量の逸脱・濫用はなく適法と判断した。

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資料の日付
2012年2月28日
分野
判例・訴訟
立場
賛否のある論点
タグ
高齢者保護費の引き下げ基準額憲法25条制度改正
地域
日本
資料の種類
判例
テーマ
老齢加算の廃止

本文と出典

【要点】 ・生活扶助に上乗せされていた老齢加算(原則70歳以上)は、2004年度から3年かけて段階的に減らされ、2006年度に廃止された。 ・最高裁判所第三小法廷は2012年(平成24年)2月28日、東京都内の受給者らの訴えで、廃止は生活保護法3条・8条2項に違反せず、憲法25条にも違反しないとして上告を棄却した(平成22年(行ツ)第392号)。 ・最高裁判所第二小法廷は同年4月2日、北九州市の受給者らの訴えで、廃止を違法とした福岡高等裁判所の判決を破棄し、審理のやり直しのため差し戻した(平成22年(行ヒ)第367号)。 ・二つの判決は、大臣の判断の「過程及び手続」に過誤・欠落があるかを調べる枠組み(判断過程審査)を使った。 【数字・中身】 判決文(2012年2月28日)が認めた事実: ・廃止前の老齢加算は、1級地の居宅で月1万7,930円 ・同じころの70歳以上単身の基準生活費(加算を除く)は、1級地-1で月7万5,920円、1級地-2で月7万2,740円 ・厚生労働省の特別集計(1999年全国消費実態調査)では、無職単身世帯の生活扶助相当の消費支出は、収入の低い方から5分の1の層で60〜69歳が月7万6,761円、70歳以上が月6万5,843円で、どの収入階層でも70歳以上が少なかった ・1999年度の被保護者生活実態調査では、毎月の貯蓄の純増が、老齢加算のない世帯9,407円に対し、ある世帯は1万4,926円だった ・社会保障審議会の専門委員会は2003年12月16日の中間取りまとめで、老齢加算に相当する特別な需要は認められず廃止の方向で見直すべきだとし、あわせて高齢者世帯の最低生活水準への配慮と激変緩和を求めた 判断の枠組み: ・最高裁は、①70歳以上に特別な需要がないとした判断と、②激変緩和をどうするかの判断のそれぞれに、裁量の逸脱・濫用があれば違法になるとした ・そのうえで、判断は統計などの客観的な数値との合理的な関連性や専門的知見との整合性を欠かず、3年かけた段階的な廃止で影響は相当程度緩和されたとした 【背景】 ・老齢加算は1960年4月、老齢福祉年金を収入とみなすのに合わせて、同じ額を生活扶助に上乗せする形で始まった(判決文)。 ・財政制度等審議会の分科会は2003年6月の建議で、70歳未満の受給者との公平などから廃止に向けた検討を求め、同月の閣議決定「基本方針2003」も見直しを掲げた(判決文)。 ・下級審では、東京・広島・京都などの判決が廃止を適法とする一方、福岡高裁(2010年6月14日)だけが違法と判断していた(村上裕章・法政研究80巻1号)。 【論点】 ・廃止は適法とする立場(最高裁第三小法廷・2012年2月28日、裁判官全員一致):最低限度の生活の具体化には高度の専門技術的な考察と政策判断が要り、大臣に裁量がある。専門委員会の統計にもとづく検討を経た判断で、過程と手続に過誤・欠落はない。 ・審理が足りないとして廃止を違法とした立場(福岡高裁・2010年6月14日、最高裁4月2日判決の要旨による):大臣は専門委員会の中間取りまとめをふまえた検討をせず、裁量を逸脱・濫用したと判断した。最高裁はこれを、専門委員会の意見は大臣を法的に縛るものではないなどとして退けた。 ・激変緩和は「生存権の保障の内容」だとする意見(最高裁4月2日判決の須藤正彦裁判官の意見):結論には賛成しつつ、長年続いた加算を一度に廃止すれば高齢者の生活に看過しがたい影響を及ぼしうるとし、大臣にはできる範囲で激変緩和をとる責務があったと述べた。 ・判決に疑問を示す研究者の立場(村上裕章・九州大学教授の判例研究、法政研究80巻1号・2013年7月):下回ってはならない絶対的な水準の面からの検討が十分か疑問もあるとし、中間取りまとめの公表から短期間で廃止を実質的に決めたことにも疑問がないわけではないと述べた。また憲法学説には、社会保障の水準の切り下げはより厳しく審査すべきだという考え方(制度後退禁止原則)があるが、判決はこれを採らなかったとみている。 【注意】 ・4月2日の判決は廃止を「適法」と言い切ったのではなく、違法とした高裁判決を破棄して審理をやり直させたもの。差し戻し後の結果はこの記事では扱っていない。 ・金額は廃止前(2004年改定前)の保護基準の額で、いまの基準額ではない。 ・2013〜2015年の生活扶助基準の引き下げ(デフレ調整)をめぐる2025年の最高裁判決とは別の事件。 【出典】 ・最高裁判所第三小法廷 平成24年2月28日判決(平成22(行ツ)392、民集66巻3号1240頁)裁判例情報(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/hanrei/82037/detail2/index.html ・同 判決全文(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-82037.pdf ・最高裁判所第二小法廷 平成24年4月2日判決(平成22(行ヒ)367)裁判例情報(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/hanrei/82172/detail2/index.html ・同 判決全文(裁判所ウェブサイト)https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-82172.pdf ・村上裕章「判例研究 生活保護老齢加算廃止訴訟」(法政研究80巻1号205〜218頁・九州大学法政学会・2013年7月31日)https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/27340/p205.pdf 【動画】 ・老齢加算廃止で敗訴確定  「厚労相判断に誤りなし」(共同通信 KYODO NEWS)https://www.youtube.com/watch?v=r9AcY5ebZDo

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