No.96新着 住宅扶助とは別の「住宅手当(家賃補助)」をつくるべきか:支援団体・自治体職員の提案と、厚生労働大臣の答弁(2024年)
2024年の生活困窮者自立支援法などの改正の審議で、支援団体や自治体職員が、住居確保給付金を土台にした恒常的な住宅手当(家賃補助)を求めた。武見厚生労働大臣は2024年3月27日、生活保護とは別に住居費を保障する制度は公平性の問題があり慎重な検討が必要と答えた。
本文と出典
【要点】
・生活保護では家賃は住宅扶助として出る。離職などで住まいを失った人や失うおそれの高い人には、一定期間、家賃相当額を出す住居確保給付金がある(厚生労働副大臣の答弁)。生活保護とは別に、恒常的に住居費を保障する国の制度をつくるかが論点になっている。
・2024年3月26日の衆議院厚生労働委員会の参考人質疑で、国民の住まいを守る全国連絡会の代表幹事は、家賃補助制度と公営住宅を「居住保障の二本柱」とし、住居確保給付金を土台にした恒常的な住宅手当を求めた。
・2024年4月11日の参議院厚生労働委員会では、座間市の福祉部参事(参考人)が、普遍的な社会保障施策としての住宅手当などの検討を求めた。
・武見敬三厚生労働大臣は2024年3月27日の衆議院厚生労働委員会で、国による新たな住居費の支援には慎重な検討が必要と答えた。
【数字・中身】
支援団体が求めた住居確保給付金の改善(2024年3月26日・参考人の意見):
・求職活動の要件をなくす
・再支給の条件を広げる
・収入の要件と支給額を広げる
2024年の改正法で実際に変わったこと(厚生労働省の通知・2024年4月24日):
・住居確保給付金の対象を広げ、家賃の安い住宅への転居で生活を安定させる人にも支給できるようにした
・自治体の住まいの相談支援を明確にし、入居後の見守りなどを強めた
国会でのやりとり(2024年4月):
・田村まみ議員(国民民主党・新緑風会)は4月16日、社会保障審議会の部会で2022年4月26日に、住宅手当などの家賃補助的な施策も含め、普遍的な社会保障施策として検討する必要があるのではないかという論点が示されていたと指摘した
・山本香苗議員(公明党)は4月9日、家賃補助と見守り付きの住まいの提供はどちらも大事で、家賃補助は住居確保給付金の拡充で行うのが現実的と述べた
【背景】
・生活保護基準部会でも、低い家賃の賃貸住宅で住宅扶助の基準が家賃の下限のように働いている例があるとの指摘や、住宅扶助基準は根本的な課題を含め中長期の議論が必要との意見が出ている(2026年5月26日・第57回の主な意見)。
・同じ参考人質疑で名古屋商科大学の教授(参考人)は、公営住宅よりも、個人への所得の補助のほうがよいとの考えを述べた。
【論点】
・恒常的な住宅手当をつくるべきとする立場(国民の住まいを守る全国連絡会の代表幹事・2024年3月26日、座間市福祉部参事・2024年4月11日の参考人意見):全国連絡会の代表幹事は、住居確保給付金がコロナ禍で大きな役割を果たしたとし、それを土台にした恒常的な住宅手当を求めた。欧米の国々はおおむね家賃補助・住宅手当の政策に移っているとも述べた。座間市の参事は、住宅を確保している人も収入の減少などで支援が必要になり得るとして、住宅手当などの検討を求めた。
・慎重に考えるべきとする立場(武見厚生労働大臣・2024年3月27日答弁):困っている人には個別の事情に応じた住まいの支援で自立を促すのが適切とした。最低限の生活を保障する生活保護がある中で、別に恒常的に住居費を保障する制度をつくると、最低限度を超えた保障を行うことの公平性の問題が生じるとした。
・まず今回の施策を進めるとする立場(厚生労働省社会・援護局長・2024年4月16日答弁、宮崎政久厚生労働副大臣・2024年4月9日答弁):相談窓口の明確化、入居後の支援、国土交通省の施策の組み合わせ、転居支援の強化をまず進めるとした。副大臣は、改正法の附則に5年後の見直しがあり、給付の対象や水準についての指摘の趣旨は重要だと述べた。
【注意】
・住宅手当の具体的な金額や対象を示した政府案はない(2026年10月時点で確かめた範囲)。
・参考人の肩書きは2024年の国会会議録の記載による。
【出典】
・第213回国会 衆議院厚生労働委員会 会議録(2024年3月26日・坂庭國晴参考人)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121304260X00520240326/10
・同 会議録(2024年3月26日・坂庭國晴参考人の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121304260X00520240326/72
・同 会議録(2024年3月26日・原田泰参考人の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121304260X00520240326/70
・第213回国会 衆議院厚生労働委員会 会議録(2024年3月27日・武見敬三厚生労働大臣の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121304260X00620240327/91
・第213回国会 参議院厚生労働委員会 会議録(2024年4月11日・林星一参考人)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121314260X00620240411/6
・第213回国会 参議院厚生労働委員会 会議録(2024年4月16日・田村まみ議員の質問と朝川知昭社会・援護局長の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121314260X00720240416/79
・第213回国会 参議院厚生労働委員会 会議録(2024年4月9日・山本香苗議員の質問と宮崎政久厚生労働副大臣の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121314260X00520240409/96
・「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」の公布等について(通知)(厚生労働省社会・援護局長・2024年4月24日)https://www.mhlw.go.jp/content/001563155.pdf
・第58回 生活保護基準部会 資料1(第57回における主な意見)(厚生労働省・2026年6月30日)https://www.mhlw.go.jp/content/12002000/001716611.pdf
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