No.94新着 生活保護での自動車の保有をもっと認めるべきか:日弁連の緩和の提案(2025年9月)と、厚生労働大臣の答弁(2025年6月)
日弁連は2025年9月18日、名古屋高裁判決を受けて、生活保護での自動車の保有を認める要件の緩和を改めて求めた。厚生労働大臣は2025年6月6日、緩和は法の趣旨に沿わないと答弁している。
本文と出典
【要点】
・生活保護では、自動車は「利用し得る資産」とされ、原則として保有が認められない。障害のある人や、公共交通機関の利用が著しく難しい地域の人が通勤・通院などに必要な場合などに、例外として認められる(厚生労働大臣の答弁)。
・日本弁護士連合会(日弁連)は2025年9月18日の会長声明で、自動車の保有を認める要件の緩和を改めて求めた。
・きっかけは、2025年6月26日の名古屋高裁判決。三重県鈴鹿市が、身体に障害のある受給者に自動車の保有を認めず、保護を停止した処分を違法とした一審判決を維持し、確定した。
・福岡資麿厚生労働大臣は2025年6月6日の衆議院厚生労働委員会で、扱いを緩めることは生活保護法の趣旨に沿うものではないと答弁した。
【数字・中身】
日弁連の提案(2024年9月19日の意見書・2025年9月18日の会長声明):
・処分しても価値が小さい(例:その世帯の最低生活費の6か月分まで)生活用品としての自動車は、ローン返済中のものも含め、その地域で70%程度の普及率があれば原則として保有を認める通知を出すこと
・2014年3月31日の厚生労働省の通知で加わった「タクシーでの移送と比べて自動車での通院が妥当か」という要件を、すぐに削ること
日弁連の声明が挙げた数字:
・自動車の普及率(2023年):全世帯で全国77.6%、首都圏以外82.3%
・日弁連の全国自治体アンケート(2023年9月6日〜10月6日):回答した自治体の受給世帯数に対する保有容認の件数の割合は0.6%
国の動き(厚生労働大臣の答弁):
・2024年12月、自治体向けの事務連絡で、例外として保有が認められた障害のある人などが、日常生活に欠かせない買い物などにも自動車を使えることをはっきりさせた
【背景】
・日弁連の声明は、鈴鹿市をめぐる別の事件でも受給者の請求が認められた(津地裁2024年3月21日、名古屋高裁2024年10月30日)ほか、全国で同じような争いが多く起きているとしている。
・2025年6月6日の衆議院厚生労働委員会で浅野哲議員(国民民主党・無所属クラブ)は、50の地方議会から自動車の保有制限の見直しを求める意見書が出ていると述べ、制度の転換を求めた。
【論点】
・保有をもっと認めるべきとする立場(日弁連・2025年9月18日会長声明):公共交通の廃止や減便が広がる中、自動車は多くの地域で生活の維持に欠かせず、就労による自立や通院のためにも必要だとして、最低限度の生活の保障と自立の助長という法の目的からも、今より広く保有を認めるべきとした。今の通知が保有を原則禁止とするなど限定的で、誤った運用を招いているとした。
・原則として認めない扱いを続ける立場(福岡厚生労働大臣・2025年6月6日答弁):生活保護は利用し得る資産や能力などを活用することが要件で、自動車は利用し得る資産に当たり、維持費が生計を圧迫することなどから原則として保有を認めていないとした。緩めることは、最低生活の需要を満たしつつ、これを超えない範囲で保護するという法の趣旨に沿わないとした。
【注意】
・0.6%は日弁連のアンケートに回答した自治体の数字で、全国の公式な統計ではない。
・資産としての自動車の扱いのしくみは、別の記事(資産の扱い:預貯金・持ち家・自動車)も参照。
【出典】
・名古屋高裁判決を受け、改めて生活保護における自動車保有要件の緩和を求める会長声明(日本弁護士連合会・2025年9月18日)https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2025/250918.html
・第217回国会 衆議院厚生労働委員会 会議録(2025年6月6日・福岡資麿厚生労働大臣の答弁)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121704260X02520250606/140
・同 会議録(2025年6月6日・浅野哲議員の質問)https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121704260X02520250606/139
【動画】
・「車の所有で生活保護の支給を停止したのは違法」三重・鈴鹿市の生活保護停止処分を取り消す判決(CBCニュース【CBCテレビ公式】)https://www.youtube.com/watch?v=61NrKB0jpGg
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